円形脱毛症

  1. どんな病気?
  2. 分類
  3. 原因
  4. 診断と検査
  5. 治療

1. どんな病気?

円形脱毛症とは、主に頭部で、円形に脱毛してしまう疾患です。その本態は、成長期毛包の毛球部周囲へのリンパ球浸潤を特徴とする自己免疫疾患です。罹患部位において、IFN-γ、IL-15などの発現亢進が認められ、細胞障害性T細胞が活性化しています。

2. 分類

円形脱毛症の重症度の評価には、脱毛部の面積の割合がよく用いられます。S0:脱毛なし、S1:脱毛面積が頭部全体の25%未満、S2:同25〜49%、S3:同50〜74%、S4:同75〜99%、S5:全頭脱毛となります。

病期は急性期と慢性期に分かれます。急性期では、毛包周囲にリンパ球の浸潤を認め、トリコスコピーという検査で、毛球部の萎縮性変化を認めます。慢性期では、先端が球状の毛が観察されます。

円形脱毛症では、軽度の脱毛のみの症例では、80%程度で自然に治ることが期待できます。しかし、頭の広範囲で脱毛が広がっている場合(全頭型)や全身の毛が脱毛している場合(汎発性)では、10%以下の回復率と言われています。

3. 原因

円形脱毛症は、毛根部分に対して免疫が異常に働いてしまっている自己免疫疾患と考えられています。このような免疫の異常反応が起きてしまう要因には、疲れやストレス、感染症などの要因や、体質によるものがあります。円形脱毛症の発症者には、橋本病などの甲状腺疾患、尋常性白斑、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、Ⅰ型糖尿病、重症筋無力症などの自己免疫疾患を併発している場合があります。特に、甲状腺疾患は約8%、尋常性白斑は約4%の患者で円形脱毛症を併発していると言われています。

また、アトピー性皮膚炎、気管支炎、アレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患を持っている人は、円形脱毛症を発症しやすいとされています。

精神的ストレスは、円形脱毛症の発症要因のひとつとして挙げられます。精神的ストレスを私たちが受けると、それに立ち向かうために交感神経が活発に働きます。しかし、このときに過度なストレス状態が持続的にある状況にさらされると、交感神経に異常をきたします。その結果、血管を収縮させ、頭皮への血流が悪くなり、毛根への栄養補給が行き届かなくなり脱毛が引き起こされると考えられます。さらにストレスは、免疫調節や内分泌系の異常も引き起こします。

妊娠してから産後までの女性ホルモンの変化も、原因の1つと考えられています。女性が妊娠すると体内の女性ホルモン値は通常の100倍以上に増加しますが、出産後、正常値に戻ります。女性ホルモンには発毛促進させる作用があり、逆に減少すると抜け毛につながります。毛の周期との関係もあって産後3~4ヵ月後に抜け毛が多くなる傾向があります。このような産後脱毛の女性の一部で円形脱毛症になることもあり、また、育児によるストレスの増加や食事の偏りが原因となって、産後の抜け毛が起きることもあります。

4. 診断と検査

容易に脱毛が起こり、境界がはっきりしていて、円形〜類円形であれば、円形脱毛症の可能性が高いです。円形脱毛症は、他の疾患との関連性もあるため、血液検査や毛髪、頭皮を観察するなどの検査を行い、診断していきます。

牽引テストでは、易脱毛性を診ます。抜けた毛の毛球部を観察します。また、トリコスコピーという検査で、頭皮と毛を観察します。漸減毛の有無などを確認します。SLE、梅毒、頭部白癬、トリコチロマニア(抜毛症)などで生じる脱毛を除外する必要があります。

5. 治療

ステロイドの外用(アンテベートローションなど)または注射(ケナコルトAなど)を使用します。また、血管拡張作用のあるフロジン液も使用することがあります。脱毛部位に液体窒素などで刺激を与えて、免疫細胞の働きを抑えることで、毛髪の再生を図る冷凍凝固療法が行われることもあります。また、エキシマライト光線療法といって、紫外線を照射して、免疫細胞の働きを調節し、脱毛を防ぐような治療法も保険適応で行われています。

特に急速かつ広範囲に脱毛が進行してしまっている場合には、点滴によるステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン500mg 3日間など)を行います。ガイドライン上では、発症または急性増悪から半年以内に実施します。中等量のステロイドの内服も毛髪が回復する可能性があり選択肢となります。肥満や満月様顔貌、緑内障や糖尿病、骨粗鬆症といった副作用に注意が必要です。

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