脂肪腫

  1. 脂肪腫とは?
    • 線維脂肪腫
    • 血管脂肪腫
    • 筋脂肪腫
  2. 原因
  3. 診断
  4. 治療
  5. 注意点

1. 脂肪腫とは?

脂肪腫(リポーマ)とは、粉瘤(アテローマ)の次に頻度が高い皮下の良性腫瘍です。脂肪組織の存在する部位には、身体中どこでも発生する可能性があります。男女差はほぼありません。幼少期から発生すると考えられていますが、小さいうちには基本的に自覚症状はありません。緩徐に増大するため、何年かして隆起に気づいて受診される例が多くあります。

1-1. 線維脂肪腫

最も一般的な脂肪腫です。首、背部、上肢、大腿部などに境界明瞭な柔らかい腫瘤としてみとめられます。徐々に大きくなり、中高年になって自覚する場合が多いです。組織学的には成熟した脂肪組織で構成されます。多くの例では腫瘍は被膜を有しており、小さい皮切からツルっと摘出することができます。

1-2. 血管脂肪腫

上肢や体幹部などで、大きさが1cm程度の多発する皮下腫瘍がみとめられる例では血管成分の多い血管脂肪腫というタイプの可能性があります。線維脂肪腫と比較すると、比較的小ぶりで境界が明瞭で、若干硬結感があります。自発痛や圧痛が自覚症状としてもあることがあります。

1-3. 筋脂肪腫

筋層間や筋肉内に脂肪腫が出てくる比較的深部に発生するタイプです。後頸部に好発します。線維脂肪腫に比較すると皮膜が不明瞭な場合があり、摘出のために比較的大きめの切開を要します。また浸潤的に発育する性質があるため、手術時には周囲の正常な筋を含めて切除する必要があります。

2. 原因

肥満、糖尿病や高脂血症との関連が示唆されていますが、正確な原因は明らかになっていません。また、予防法も知られていません。

多発例の中には稀ですが、特徴的な症状や皮膚以外の臓器障害を伴う場合は、家族性脂肪腫症や遺伝性疾患が疑われます。こうした場合は、専門外来の受診をお勧めする場合があります。

3. 診断

臨床症状と画像検査、そして病理検査により診断されます。

臨床症状としては、皮下に柔らかい腫瘤がふれることが一般的です。徐々に増大するために、隣接する神経を圧迫することでしびれが発生する可能性もあります。しかし、強い硬結がふれたり、有痛性の場合は、脂肪腫以外の疾患が鑑別に入ります。また、粉瘤のように悪臭を放つこともありません。

画像検査としては、超音波検査(エコー)やMRI検査があります。エコーでは、後方陰影の増強と外側陰影を伴う充実性で内部均一の低エコー像を呈します。エコーは外来でも簡便にできますが、皮下より深い部分にある場合は、エコーでは確認できないためMRIが有用です。MRIでは、腫瘍はT1強調画像・T2強調画像ともに高信号に描出され、また脂肪抑制画像で低信号を示します。画像上、悪性腫瘍との鑑別が困難なこともあります。

確定診断は病理検査です。術前に他の検査で悪性が否定的でも、病理組織が悪性の場合は、悪性腫瘍として追加治療が検討されることがあります。また、10cm以上の巨大な腫瘍、硬結が強い例、急速増大を示す例、比較的強い疼痛を伴う例、周囲の組織との癒着が疑われる例、深部に腫瘍が入り込んでいる例などでは、完全切除する前に、腫瘍の一部だけを取って病理検査をする生検を行う場合もあります。

4. 治療

根治的には手術による切除が行われます。比較的小さく、皮下直下にある場合は日帰りの局所麻酔手術で一般的には治療可能です。比較的大きい例、周囲組織との癒着が疑われる例、深部に入り込んでいる例や、主要な神経や血管が近くを走行している例では、入院下での全身麻酔での手術をお勧めする場合もあります。

また、脂肪吸引や内服での治療は行われないのが一般的です。日常生活に困らない範囲であれば、経過観察となることもあります。

手術では、腫瘍が摘出しやすい体位で横になっていただきます。腫瘍直上の長軸方向に、なるべく傷が少ないようにデザインします。そのデザイン部位周囲に局所麻酔を局注していき、麻酔の効果が出てきたのを確認してから切開を行います。深部へと剥離を進めて腫瘍に到達したら、被膜を破らないように周囲の結合組織から剥がしていきます。全周性に剥離ができたら腫瘍を摘出します。創部は洗浄・止血をした上で、皮下は吸収糸で、表層は非吸収糸で縫合していきます。部位によっては皮下を縫合しない場合があります。また、血腫や漿液腫が予想される症例では、ドレーンというシリコン性チューブを留置することもあります。

手術翌日からは1日1回創部を泡せっけんで洗浄し、きれいに洗い流してから、軟膏を当ててガーゼで覆います。ドレーンが留置されていれば、染み出しが少なくなった術後数日で抜去します。抜糸は1-2週間で行います。抜糸以後はテーピングなどを行い、きれいな傷跡を目指します。部位によっては漿液腫が術後数週間持続し、外来で定期的に注射針を用いて抜く必要があることもあります。切除した場合、再発が起こることはあまりありません。筋脂肪腫の場合は術後再発する可能性もあります。

5. 注意点

脂肪腫であれば、基本的には良性腫瘍ですので治療のタイミングが遅れることで、悪性腫瘍のように浸潤転移などをする可能性は基本的にありません。日常生活に困らない範囲であれば、必ずしも切除する必要はありませんが、切除して病理検体で確認しないと悪性かどうか、脂肪腫以外の疾患かどうか、最終的にはわかりません。皮下のできものを自覚された場合、まずは受診し、相談してみることが重要です。

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