マンジャロ
マンジャロについて

マンジャロ(Mounjaro)は、、アメリカの製薬会社イーライリリー社が開発した、週1回投与の注射型医薬品です。主に2型糖尿病の治療薬として承認されていますが、肥満症(肥満関連疾患)や体重管理を目的とした使用でも注目されています。
現在ではアメリカをはじめとする複数の国で、肥満症の治療薬として正式に承認されおり、日本では2023年に2型糖尿病治療薬として承認されました。
マンジャロとは
マンジャロの有効成分は「チルゼパチド(tirzepatide)」という新しいタイプの薬剤で、週に1回の皮下注射で使用します。
チルゼパチドは、『インクレチン』と呼ばれる消化管ホルモンに着目した薬で、これまで主流だったGLP-1受容体作動薬に加えて、GIP受容体にも同時に作用する世界初の持続性受容体作動薬です。

インクレチン
「インクレチン」は、食事を摂った後に腸から分泌されるホルモンの総称で、主に血糖コントロールに関与しています。
その中でも代表的なのが『GLP-1』と『GIP』の二種類です
- GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)
腸から分泌されるインクレチンホルモンの一種で、血糖値の調整において中心的な役割を果たしています。食事を摂ると、腸壁から分泌されたGLP-1は血液中に入り、脳や膵臓、胃腸などの様々な臓器に作用します。このホルモンは、特に膵臓のβ細胞を刺激してインスリン分泌を増加させ、食後の血糖値の急激な上昇を抑制します。
また、脳の満腹中枢に働いて食欲を抑え、過食を防いで食事の摂取量を自然に減少させます。
- GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)
GLP-1と同様の腸管ホルモンの一種で、食事を摂取すると腸壁から放出され、膵臓のインスリン分泌を促進することで血糖値を調節します。
GIPは、グルカゴンというホルモンの分泌にも影響を与えます。グルカゴンは、血糖値を上昇させる役割がありますが、その血糖値と連動しインスリンとのバランス調整を行うように働きます。
また、脂肪細胞の働きを調整し、脂肪代謝を改善することにより、体脂肪の減少や脂肪燃焼の促進も期待されます。
これまでの糖尿病治療薬は主にGLP-1のみをターゲットにしていましたが、マンジャロはGLP-1とGIPの両方の受容体に作用するため、より効果的に血糖を下げると同時に、体重の減少や脂肪の代謝促進にも優れた効果を発揮するとされています。
特徴と作用機序
- 食後高血糖の抑制
膵臓のβ細胞を刺激してインスリンの分泌を増加させます。インスリンは血糖値を下げるホルモンであり、この作用により血糖値の上昇が抑制されます。
また、血糖値を上げるホルモンであるグルカゴンの分泌を抑制する作用により、肝臓からの糖の放出が減少し血糖値の上昇を防ぐことができます。
- 食欲抑制作用
食事を摂取した後、脳に働きかけ満腹信号を強化します。それにより食事後の満腹感が持続し、空腹感を感じにくくなることにより食欲が自然に抑えられます。
- 胃排出遅延作用
胃から小腸への移動が遅くなることで消化が長時間かかり、長時間の満腹感が維持されます。
さらに胃から小腸への移動が遅れることで、糖が小腸での吸収を緩やかにし、食後に血糖値が急激に上がることを抑制します。
- 脂肪の蓄積抑制
インスリンの感受性を高めることで血糖の利用を促進し、余分な糖が脂肪として蓄積されるのを抑えます。
投与方法と使用経過
マンジャロは週に1回、皮下注射で投与します。注射部位は腹部や太もも、上腕などが推奨されており、患者自身で自己注射することも可能です。
投与量は段階的に増やすステップアップ方式が基本となります。
初回は2.5mgから開始し、数週間ごとに5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mgへと次第に増やしていきます。(最大投与量は15mg/週)

【0週目】初回投与(開始日)
初期用量(通常は2.5mg/週)からスタートします。これは体が薬剤に慣れるための導入量です。
- 副作用が出やすい時期でもあり、吐き気や軽い腹部不快感、便秘、下痢などの消化器症状が多く見られます
- 一時的な「食欲低下」や「空腹感の減少」を感じ始める方もいます
- 体重に大きな変化はまだ出ませんが、間食が減る、満腹感が長く続くなどの自覚が出てきます
【4週目】用量調整(5mgへ増量)
通常、4週間ごとに用量が増量されていきます(最大15mgまで段階的に)。ここで効果をさらに実感する方が増えます。
- 食後の満腹感が長く続いたり、食事量が自然に減ってきます
- 体重の減少が徐々に現れ始める方も出てきます(※個人差あり)
【8〜12週目】継続使用による安定期(7.5mg〜10mg)
副作用は徐々に軽減され、身体が薬剤に慣れてきます。体重減少効果がより明確になる時期です。
- 月に2〜4kg前後のペースで減ることも(※生活習慣により異なります)
- 食欲のコントロールがしやすくなり、リバウンドしにくい食習慣が自然に身につく方もいます
【16週目以降】最大効果が期待できる時期(12.5〜15mg)
多くの臨床試験で、16週〜24週(4〜6ヶ月)以降に最も高い減量効果が見られています。
- 特に15mgまで増量した方は、平均して10〜15%程度の体重減少を経験することもあります
- 血糖値(HbA1c)も改善しやすく、糖尿病予防や代謝の正常化にも効果を表します
副作用とリスク
マンジャロの使用初期によくみられる副作用は、消化器系の不調です。これらの症状は多くの場合、時間の経過とともに軽減していきますが、強い不快感が続く場合は医師にご相談ください。
- 吐き気や嘔吐:特に投与開始初期に起こりやすいですが、数週間で落ち着く傾向があります。
- 下痢または便秘:胃腸の働きに影響するため、一時的な排便異常が見られることがあります。
- 腹部の痛みや膨満感:胃の内容物の排出がゆっくりになる影響で生じることがあります。
その他に報告されている副作用
以下は頻度は低いものの、注意が必要な副作用です。異常を感じた場合は速やかに受診してください。
- 急性膵炎:強い腹痛や背中への痛み、吐き気・嘔吐
- 食欲の大きな低下:体重が急激に減る場合や、栄養状態が心配される場合
- 浮動性めまい:ふらつきや立ちくらみ
- 味覚の変化:食べ物の味が薄く感じられるなど、味覚の違和感
- 糖尿病網膜症の悪化:糖尿病合併症としても知られるため、定期的な眼科受診が推奨されます
使用に注意が必要な方
以下に該当する方は、マンジャロの使用が推奨されない場合があります。使用前に必ず医師にご相談ください。
- 重度の胃腸疾患(胃潰瘍、炎症性腸疾患など)をお持ちの方
- 膵炎の既往がある方
- 甲状腺疾患の既往がある方、または家族歴がある方(特に甲状腺髄様がん)
- インスリンやSU薬(スルホニル尿素薬)などと併用している場合の低血糖リスクが高い方
- 妊娠中、または2か月以内に妊娠を予定している方
- 授乳中の方