とびひ(伝染性膿痂疹)
- 概要
- 分類
- 水疱性膿痂疹(すいほうせいのうかしん)
- 痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)
- とびひの診断
- とびひの治療法
- 黄色ブドウ球菌による水疱性膿痂疹への処方例
- 連鎖球菌による痂皮性膿痂疹への処方例
- MRSAによる水疱性膿痂疹
- 塗り薬
- 抗ヒスタミン剤(かゆみ止め)
- 注意点
1. 概要
伝染性膿痂疹(とびひ)は、黄色ブドウ球菌や連鎖球菌によって生じる皮膚感染症です。びらんや水疱が比較的急速に拡大します。
小児を中心に、大人でも感染することがあります。「飛び火」というのは俗称であり、火事の火の粉が飛んで燃え広がるように、急速に伝染する様子からそう呼ばれます。夏に多く見られます。保育園や幼稚園などで集団感染することもあります。
2. 分類
伝染性膿痂疹(とびひ)には2種類あります。
- 水疱性膿痂疹
黄色ブドウ球菌の感染によって起こります。伝染性膿痂疹(とびひ)の大多数が、水疱性膿痂疹です。黄色ブドウ球菌によって産生される表皮剥奪酵素が病変を形成します。水疱性膿痂疹が広範囲に及び全身症状を伴うものがブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(Staphylococcal scalded skin syndrome: SSSS)と考えられています。
湿疹や外傷、虫刺されなどをきっかけに発症することがあります。鼻の下や口の周り、わきの下や手足など、汗をかきやすいところや露出しているところに多く発生するのが特徴です。通常、発熱は伴いません。全身状態は良く、子供の場合は比較的元気があります。
- 痂皮性膿痂疹
主に溶血性連鎖球菌の感染によって起こります。このタイプの特徴は初めは赤く腫れ、かゆみを伴った細かい水疱ができ、次第に固まって厚いかさぶたを載せたびらんになります。時に腎炎を併発するため注意が必要です。
3. とびひの診断
診断は医師の問診と視診でつくことがほとんどです。炎症を起こしている菌の特定や、抗生剤の効き目を確認するためにさらに詳しい検査を行うことがあります(培養検査など)。痂皮性膿痂疹の場合は、採血で、ASOが上昇し、腎炎を合併することがあり、尿検査が追加されることもあります。
4. とびひの治療法
症状が軽ければ塗り薬のみで対応することもありますが、抗菌剤の服用を合わせて行うのが一般的です。
4-1. 黄色ブドウ球菌による水疱性膿痂疹への処方例
・Lケフレックス小児用顆粒
・ケフラール細粒小児用
・セフゾン小児用顆粒
・ファロムドライシロップ小児用
4-2. 連鎖球菌による痂皮性膿痂疹への処方例
・ユナシン細粒小児用
・クラバモックス小児用配合ドライシロップ
4-3. MRSAによる水疱性膿痂疹
・ホスミシンドライシロップ
・8歳以上ならミノマイシン顆粒
抗生剤の内服期間としては、1-2週間が一般的です。抗生剤が処方されたら、途中で飲むのをやめないようにしてください。菌が完全に取り除かれていなかった場合「耐性菌」となってしまい、症状が悪化することがあります。その場合、治るまでに時間がかかりますし、より強いお薬が必要になるからです。最後まで飲み切るようにしましょう。
4-4. 塗り薬
・リンデロンV軟膏:1日1~2回
・フシジンレオ軟膏:1日1~2回
・アクアチム軟膏:1日1~2回
患部によく泡立てた石鹸をつけて、こすらないようにきれいに洗い流した後、1日2〜3回患部に塗ります。患部を覆うようにガーゼや包帯でくるみ、浸潤液が患部周囲や衣服、タオルなどに付かないように注意します。水疱は小さなものならそのままにしておきますが、大きくなっている場合は、クリニックで皮を破ることも行います。浸潤液を排出させて洗い流したうえで軟膏を塗っておきます。
4-5. 抗ヒスタミン剤(かゆみ止め)
・エピナスチンドライシロップ
・ザイザルシロップ
5. 注意点
これまで述べてきましたように、掻きむしらないこと、患部を覆うこと、自己判断で薬をやめないことが重要になります。できるだけ早めに皮膚科を受診するようにしてください。
また、とびひを予防するために重要なこととして、爪を切っておく、鼻をいじらない、汗はこまめに拭く、お肌の乾燥を避ける、虫よけスプレーなどを利用する、などがあります。
また、兄弟間での水平感染があるため、タオルを共有しない様にしたり、一緒に入浴したりしないようにする必要があります。
とびひは、学校感染症で第3種(その他の感染症)として扱われます。病変が広範囲な場合は、学校を休みますが、範囲が限局しており患部が覆われている場合は、登校・登園は禁止する必要はありません。プールや水泳は治るまで禁止します。