手足口病
- どんな病気?
- 症状
- 診断
- 治療
- 注意事項
1. どんな病気?
手足口病は、口の中、手のひら、足の裏、おしり、肘、膝などに2~5mmの水疱性の発疹が生じる、エンテロウイルスによる感染症です。5歳くらいまでの小児を中心に、主に夏(ピークは7月下旬)に流行します。感染症発生動向調査によると、近年では、平成23年に最大の流行が発生しましたが、平成25年はそれに次ぐ規模の流行となっており注意が必要と言われています。保育園や幼稚園などでは、子ども同士の濃厚接触が生じやすい環境であり、手足口病の発症者が出た場合に集団感染に至りやすい傾向があります。
また手足口病は、あまり目立った症状が出ないこともあり、感染しているのに発病せず、そのうえでウイルスを排泄しているというケースもあります。家族や保育園など共同生活している人は注意が必要です。また、症状が目立たないことで、そのまま過ごしてしまって、気づいたら重症化してしまったというケースもあるので、手足口病に感染した子どもの経過は注意深く観察する必要があります。
原因ウイルスとしては、コクサッキーA16とA6、エンテロウイルス71などが知られています。潜伏期間は3~5日間で、通常は7日間のうちに自然治癒していきます。複数のウイルスが関与しているため、繰り返すことがあります。
2. 症状
水疱性発疹はびらんや潰瘍などに変化していきます。口の中に、口内炎のような痛みのある潰瘍を形成し、水や食物を摂取しにくくすることがあります。発熱症状も約1/3でみられることがありますが、軽度で38℃以下のことがほとんどです。
ごくまれではありますが、骨髄炎、脳炎、小脳失調症といった中枢神経系、また心筋炎、急性弛緩性麻痺、神経原性肺水腫、ギラン・バレー症候群などの合併症も起こすことが、知られています。
3. 診断
通常は、水疱の特徴や、分布が重要な診断要素となっており、季節や周囲での流行状況なども参考にします。口腔内水疱については、手足口病だけでなく、ヘルパンギーナ、ヘルペスウイルスなどの可能性も考えます。また手足の発疹については、水痘の初期症状、ストロフルス、伝染性軟疣腫(ミズイボ)の可能性も考えます。
4. 治療
現時点では特別な治療法はなく、症状を和らげるための対症療法を行います。ほとんどは、1週間程度で自然治癒します。もしもかゆみが強い場合には、かゆみ止めの内服薬や塗り薬を用いることがあります。
また、口の中の水疱が潰瘍化し、痛みが強くて十分な飲食ができない場合があります。そうすると脱水症状が起きやすくなります。脱水予防に経口補水液(OS-1、アクアライトなど)を用います。
5. 注意事項
- 回復しても4週間は注意
手足口病にかかって回復したとしても油断は禁物です。治った後も便の中にウイルスが残っているため2~4週間は感染源の状態です。学校保健法で出席停止の扱いになっておりませんが、他の乳幼児にうつさないように注意することが大切になります。
- 何度も繰り返すこともあり
手足口病は、一度かかってしまえば免疫ができる感染症です。しかし、原因ウイルスが複数存在するため、回復期に弱った体で再度別のウイルスに感染して何度も感染症にかかってしまうこともあります。
- 感染対策について
主に咽頭からの飛沫感染が主ですが、接触感染や糞口感染も起こします。排泄物を適切な方法で処理することも感染を拡大させないために大切なことです。おむつの交換の時は、マスクや手袋をした状態で排泄物を素手で触らないように袋に入れた後は、しっかり口を閉じ、袋を二重にしましょう。
- 登園・登校する場合
学校保健法では、手足口病は出席停止になる感染症ではありません。そのため、登校登園は、症状を観察して回復したと判断できれば、可能になります。ただ、症状が改善しても2~4週間は便の中にウイルスが排出されます。不顕性感染もある軽症疾患であり、ウイルス排泄も長期に及ぶため、登校・登園は総合的な判断で行うのが良いでしょう。